ネコじま田代島の話し
今は空前の猫ブーム。
ペットブームは今までもあった。
我が家でも小鳥、金魚、カメ等を飼っていたことがある。
しかし永らくペットの主役の座に君臨し続けたのは犬である。
犬派猫派の論争は昔からあったが、多数決では常に犬派が優勢。
ところが最近その勢力が逆転。ついに猫の天下が到来した。
このブームと呼応して注目が高まったのがネコ島の存在。
誰が名付けたか元祖ネコ島として知られるのが田代島だ。
猫好きの間ではかなり有名で、どこにあるかは知らなくても、名前だけは聞いたことがあるという人は多いようだ。
宮城県石巻市にあるその島は、人口よりもネコの方がはるかに多い。
3.11の津波被害により、島の人口減少が加速し、今や人間は完全に少数派だ。
なぜ猫がこんなに多いかと言えば、元々島民が頭を悩ませていたネズミ駆除の為に、どこの家でも猫を飼い大事にされていた。
島中を自由に歩き回る猫達は、どこの家でもエサをもらえた。
やがて彼らは家猫でもない、のら猫でもない、「島猫」になった。
ネコ島と称する条件として猫が多いということより大事なことがある。
島の人々が猫を大事にしているかどうか、この点が最も重要だ。
田代島には犬が一匹もいない。野犬はもちろん室内の小型犬すら一匹もいない。特に禁止されているわけでもない。猫愛を事さらに語る人もいない。この島では当たり前のことなのだ。
彼らの魅力はペットとはちょっと違うたくましさと大らかさだ。
街中で飼われているペットの猫よりも顔つきが凛々しく見える。ペットの猫の方が子供っぽい感じがする。
彼ら島猫は人なつこい。年中カメラを向けられているせいか、カメラを向けても嫌がらない。もちろん度を過ぎればそれなりの反撃には遭うのでご注意を。
彼らの一日は自由そのもの。夏は日陰でゴロゴロ。夏以外は日向でゴロリ。道路だろうが人の家だろうがお構いなし。お気軽そうでユーモラス。時間を忘れて見入ってしまう。
彼らは自立した生活をしていて、決まったねぐらがあるようだ。ペットではないので家の外が生活の場。一見何の心配もなさそうな彼らだが、ねぐらも野外だからそれなりに厳しい。特に冬は過酷で、仔ネコの中には春を迎えられない仔も出てくる。もちろん島の人々はエサを欠かさないようにとか、来るネコを追い返さないとか、できる事はする。しかしネコ達にも帰る所がある。厳しくてもお互いの生活を侵さない距離感、これが人々と島ネコ達との関係だ。
今は空前のネコブーム。日本全国どこにでもネコはいる。私の家にも一匹いる。しかし、島猫に逢えるのはネコ島だけ。ネコ島を訪れる人が後を絶たず、何度も足を運んでしまうのは、島猫にしかない魅力に気付いてしまったからかも知れない。